舞台「何者」

私は舞台と言えばジャニーズが出演している舞台しか見たことがないので詳しい方やお好きな方からしたら「何を偉そうなことを」と思われると思いますがなにとぞお手柔らかに…。また、まだ一回しか見ていないのでセリフ等はニュアンスです。

 

 

 

結論から言うと私の貧相な脳みそでは「すごかった、とてもよかった」という幼稚園児でも言えそうな感想しか出てこなかった。

 

 

 

 

 

「何者」は朝井リョウさんが書かれた一冊の本が原作で、自分の趣味のこと以外には全く興味も関心も持てない私はお恥ずかしい話ですが、自担が初の主演舞台を務めるまで「何者」が直木賞受賞作でなおかつ人気俳優たちによって映画化された作品ということを知らなかった。

 

 

どんな舞台も原作を読まずに、まずは舞台を観る、という謎のスタンスから原作は購入したものの初日を迎えるまでそのページがめくられることはありませんでした。

 

 

ミュージカル魔女の宅急便は東京公演を一度しか見に行くことができなかったため、若干の不安はあったものの、外部舞台、初単独主演、初座長という誇らしい文字が輝いていて私の頭のなかはきらきらでいっぱいでまだかまだかと初日を待っていた。

 

 

 

 

 

天王州銀河劇場に初めて向かった。モノレールの中にはキャリーケースや大きな荷物を持った大勢のお客さんが乗っていた。

そのなかにポツポツといる、軽装の若い女性たちは私と同じ目的なんだろうなとぼんやり思いながら天王州アイル駅についた。

 

駅と劇場が直結しているけれども、帝国劇場とはまた違った趣で友人と二人でおお~なんか変な感じと話をした。何者のポスターを見て「この人、ちょっと岸君に似てるね」と小声で話した。

 

あらんくんや長妻くん、共演者の皆様に届いているお花を横目に入場列に並び、真っ赤なふかふかな絨毯が敷かれている階段を4列で進んだ。

どこの劇場もなんで絨毯は赤くてふわふわなんだろうかというなんでもない舞台初心者らしい話をしながらパンフレットの購入をすませて座席についた。

 

 

しまった、スピーカーの目の前だし、それよりなによりも、やはり見えづらい。見切れ席って本当にこんなに見切れるものなのか…と思った。

見切れ席が手元に来たときささっと座席表をネットで確認し「あれ、な~んだ座席あるじゃん?最上手最下手を見切れで売っただけなのか~」と思っていたが、ステージの一部と上からぶら下がっているモニターの一部が見切れている。椅子をみてみたら、床にくっついているタイプでなく、座席数を簡単に増やしたり減らせたりできる椅子だった。がーん。

「俳優さんは見えるといいね」と友人と話しながらパンフレットをめくる。大きくあらんくんと長妻くんが載っている。きっと私の顔はふにゃふにゃに緩んでいただろうと思う。ふと目についた光太郎くん役を見て「岸君に似てるよねやっぱり」と数分前にした話を友人と掘り下げた。

 

 

舞台の上からぶら下がっている3つのモニターにはぐにゃぐにゃした模様と踊っている人たちが映し出されていて「こんな話だっけ…」と思った。

 

 

 

 

 

 

音楽が大きくなり、周りのお客さんの声が消えていく。ド・ドン、ド・ドン、ド・ドン、ド・ドンという心臓の音を模したリズムが目の前のスピーカーから容赦なく響き渡り自分の心臓とリンクしているようで、緊張していることを実感した。

 

ぱっと明るくなる舞台。座っているスーツの三人。あらんくん、後ろ向きだ。長妻君は、下手を向いている。むこうにいるのは美山加恋ちゃんだろうか。奥にはスーツの俳優さんたちが三人を見つめている。

 

面接だ。

 

「二宮さん」と言われて動いたあらんくんは「あらんくん」ではなくて「二宮拓人」だった。

私が勝手に座っている後姿をあらんくんだ、と思っただけで舞台上のどこにもあらんくんはいなかった。

全然知らない、別の人に見えた。

だから一瞬、二宮くんが口を開いたとき、あらんくんってこんな声だったっけ、と心がざわざわした。

 

 

物語は同い年の5人で進んでいく。大学生らしい会話が繰り広げられて一人暮らしの子の家に来るとき、みんなこんな感じだよな、とリアルに感じた。

二宮拓人くんは、いたって普通。普通の大学生の男の子。空気も読むし、話もするし、どこにでもいそうな感じの子。

光太郎くんは明るくてノリがいい、こちらもどこの大学のどの学年にもいる男の子。わざとでも嫌みな感じでもなく自分を馬鹿に装うことができる人だと思った。(良い言い回しが見つからない…)絶対コミュ力高い。

みずきちゃんも真面目な女の子。物腰も柔らかくて誰からも好かれそうな感じ。第一印象はかなり薄かったけど、この子はすごかった。(それは後程…)

りかさんはそれはもう、こういう子いる!って感じだった。いわゆる意識高い系。インターンとか、海外ボランティアとか行ってTwitterにみんなありがとう!みたいなツイート。ここまでがっちり武装している子は私の周りにはあまりいなかったけど(大学が大学だったので…)積極的に自分から行動できるすごい人、いたな〜と思える人間だった。

たかよしも容易に想像できる人物で「普通と違う自分」を好きな人ってどこにでもいるよな~と思った。

烏丸ギンジは赤ジャージにモッズコートでツイッターにしか出てこないため原作ではわからないが舞台ではある種「烏丸ギンジという概念」に見えた。熱い魂を発信している、二宮君を脅かす(?)概念。舞台自体が拓人くん目線で描かれているからか(私はそのように感じました)

サワ先輩はとっても好印象で裏がないように思えたし、なんでも受け止めてくれるような器の大きさを感じた。

 

 

物語は意外にもサラサラと進んで行って、合間に皆の裏の顔がちらり、ちらりと見えてきた。拓人君の目線から見ているからこそ、相手の心情やスーツの下に隠した就活生の決意を感じられるようになっていた。

 

きっと拓人くんがみんなを俯瞰で見ているから、自分たちの話なんだけれども他人事の様だった。

 

ただ、みずきさんの時だけは違った。拓人君自体はほかの濃いキャラクターに埋もれていてキャラクターに対して「本当はこう思っているんだ!」という拓人くん一人の心の声だけが私たちに届いていて「みんなの輪の中で」動く感覚がなかった。

でもみずきさんが分析聞かせて!といったとき、母親の話を始めた時、内定が決まったと電話をしてきたとき、すごく切ない表情だったり、なんて声をかけていいのかわからず、動きたいのに動けなかったり、逆に、みずきさんの気持ちを汲み取って、こうたろうに電話をかわったり…繊細な表現がされていて舞台を見つめているこっちが切なくなった。

 

そのころには失礼な話ですが、あらんくんをみにきた私はとうにいなくなっていて、何者というストーリーと俳優さんたちの演技に夢中になっている自分がいました。

 

みずきさんの演技もぐっと胸のあたりからこみ上げるものがあって、私が拓人くんの目線からみていたからかぎゅっと抱き寄せてあげたいと思いました…。

 

でも思うだけで、決してできないんだよね、触れることも気の利いた言葉もでないんだよね、拓人君。

 

そんな中しぼりだすことができた言葉が「俺もがんばる」で、みずきさんは微笑んだから、もうなんかね、ね。

 

 

 

 

みずきさんの内定祝いでも、りかさんは本当に鼻につく人だなと思った。それがとっても似合ってたし、今のご時世マウンティングしあう女子なんてそこら中にゴロゴロしてるからそれをしれっと、リアルに演じていてさすが子役の頃からの俳優さんはすごいなあとまた舞台初心者な感想ばかりで。

実はずっとこの舞台が始まってから思っていたんだけど、りかさんとたかよしは今後うまくいくのか?っていう部分をずっと疑問に思っていて。りかさんは頭がいいからたかよしが就活をばかにしつつその流れに足をいれていることも知ってるだろうし、逆にたかよしはガッチガチに意識を高く(?)武装した女の子を見ていてお得意のばかにする気は起きないんだろうかという不思議な気持ちがあって笑

 

まあ最後のシーンでコンビニから帰ってきたたかよしくんに泣きつくりかさんとその状況を呑み込めないままそれをなだめるたかよしくんを見て「アーサーーセンッシター」という気分になりました。笑

(舞台後友人と話した結果「ケンカになったらあのカップルはやばい」でした)

 

 

 

 

みずきさんがたかよしに思いをぶつけるところは圧巻。

あの誰にでも優しそうで、明るそうで、楽し気なツイートをしているあの子がこれだけの決意をもってこれからの人生に挑んでいて、それを鼻でわらうように馬鹿にして実際はその決意から逃げているだけの男の子に現実を諭すなんて。

 

「何点でもいいから」「自分と同じ目線で見てくれる人はもう誰もいない」

 

たかよしの心にみずきさんのまっすぐ現実をみている言葉がぐさぐさと刺さっていくのを感じました。みずきさんって、演じるの難しそう…と思いました…(見終わったら全員演じるの難しそうだなと思ったけど)

 

みずきさんには絶対に幸せになってほしい…本当に…きっと観劇中の方々みんなそう思ったのでは…と思いました。

 

 

 

 

 

りかさんと拓人くんの一騎打ち(というかほぼ一方的に攻撃されるけど)のシーンはいままで拓人君の目線から見てきていたので体中がゾクゾクして、りかさんから拓人君に浴びせられる視線が怖くて、全身がこわばりました。すべてを見透かされて、自分だけが「就活2年目」で、「ガチガチに武装したりかさん」じゃなくて「りかさん自身」の心の底から発せられる言葉が強くて重くて、怖くて怖くて。

拓人くんがりかさんに「本当の拓人くん」と「何者かになった気分の拓人君」を突きつけられて狂っていく姿は息ができませんでした。

 

これに関してはもう、みてもらわないことにはもう。

 

舞台中はすぐそこにいる拓人くんが狂っていくのをただただ瞬きもせずに見つめることしかできなくて、上からドバっと降ってきたESに埋もれながら舞台と観客側の境界線が急に曖昧になって「お前のことだ」と私にもりかさんの言葉が、みずきさんの言葉が、「何者かになりたい私」にも突きつけられていて、本当に怖かったです…

(ちょうど前列だったので本当に頭のうえからふってきて怖かった)

 

舞台上から拓人君が落ちて行ってしまったとき、狂ってしまったところでもう私の緊張はピークを迎えていたのに、緊張の限界を超えました。

たぶん、自分すごく目を見開いていたと思う…。

 

突然の沈黙に終わってしまったのかとじっと舞台を見つめると、ESに埋もれながら拓人君が這い上がってきた。

ずるずると体をひきずり、ESの海の中をうつろな目で少しづつ移動する拓人君をみて、この人は、もう一度、立てるのだろうかとすごく不安に思った。

 

 

 

 

最初の面接の場面に戻った。面接官の質問に答える拓人君がいた。開幕して最初に見たシーンと同じことが繰り返されているのに、観客の中に同じ気持ちで見ている人は誰一人いなかっただろう。

 

「プ、プリンターです。」

 

りかさんが私の頭をよぎる。

 

質問とは関係のない話をつづける拓人君。

「舞台を観に行ったんです。」

「連絡をとって…」

 

烏丸ギンジだと思った。

この面接会場にいる拓人君は、乗り越えた拓人くんなんだ、とぎゅっと胸があつくなるのを感じました。

 

 

 

 

「たぶん、この面接も、落ちた。」

 

 

 

悲しそうに、寂しそうに、弱弱しく笑う、拓人君はまっすぐ前をみつめていた。

 

 

 

「でもたぶん大丈夫」

 

 

 

ぐわっと、椅子にはりつけにされていたんじゃないかという緊張感が一気に解けた瞬間でした。

 

 

これは、すごい。この舞台は、すごい。

 

 

この舞台は、すごい。

 

 

 

 

最後、挨拶にでてきたのがあらんくんでとてもびっくりしました。

2時間みていたのは拓人くんだったのに、急にあらんくんがでてきた。

 

あらんくんが中心に立ち、丁寧に三方に礼をした瞬間ぶわーーっと「あらんくんが初主演の、座長の、この舞台を引っ張ってきたんだ」という実感が急に湧いてきて、なんてすごいんだ、なんてものを作り上げたんだと、自然と拍手の音が大きくなりました。

 

こんなすごい人を自分なんかが応援していいんだろうか、こんなすごい人を応援できてなんて幸せなんだ、こんなすごい人が成長する過程が見れて、本当に、本当に…

 

 

カーテンコールを終えて、座席から荷物を持ち移動しようとしたときどっと疲れがでた。

首が痛い。

頭も痛い。

肩もいたい。

なぜかすごく疲れている。

 

この疲労感、すごい。

体力もさることながら精神的なエネルギーの消耗が激しかった。

2時間、ぶっとおしで、ただ座ってるだけの観客がこんなにも疲れるなんて、あらんくんはいったいどれほど疲れているんだろうか。

そういえば、汗でびしょびしょだったな。

そういえば、見切れ、全然へいきだったな。

うわ、疲れた、本当に疲れた。

 

と思いながら帰路につきました。

 

友達と「疲れた」と言い合いながら、舞台の内容をはなそうとしたんだけど、あまりにも衝撃が大きいし、疲労が半端じゃなくて、結局この日は物語の深さと拓人くんのインパクトで深い話はできず、「顔がいいよね」という話しかできなかった。

 

ひどいオタクだ。

 

言いたいことは色々あるのに、観劇直後、いやその日一日、いやその次の日も消化できなくて、

多分それは舞台中、私にも突きつけられて、心にぐっさりとささってしまったから、こんなにも整理がつかないのか、動揺しているんだな…とおもいました。

 

 

 

 

原作をこれから読みます。

この舞台、一回じゃ足りない。

重いし、疲労もすごいけど、就活の話とかSNSの話とかで片付けられるものじゃなくて、人間の深い深―い奥底にある醜さとか、理想の自分とのギャップとか、自己実現とか、知識がないのでうまくまとめられないけれどそういう部分を表現していて、誰の心にも突き刺さる、そんな舞台だと感じました。

ストーリー、演者さん、監督さん、脚本家さん、スタッフの皆さんがどれだけの熱量で作り上げたのか、その熱量を肌で感じて浴びてほしい。

 

 

 

 

私の貧相な脳みそでは本当にすごい舞台だった、としか表現できなくて本当に残念だ。

 

もっと私がプロのライターさんとか、物作りをしている人だったら良かった。

 

是非、いろいろな方に見ていただきたいし、いろんな人の心に突き刺してほしい。

 

でも「自分がまた見たい」という欲望からきっと私以外の誰かが入れるはずなのに、チケットを探してしまうんだろうなあ。当日券並ぼう、と思ってしまうんだな。

 

「いろんな人に見てもらいたい」と「自分が見たい」という、こんなしょうもないオタクならではのハザマで揺れている私は本当にかっこわるいなあ。

 

とにかく、すごい舞台だったなあ。

 

どうしても拓人くんばっかりの話になってしまったけど、気持が落ち着いたらほかの登場人物についてもこここう思った!ってかけたらいいな。

 

 

 

 

 

 

舞台「何者」はすごい舞台だった。